教員ブログ

教員研修

11月7、8日と教員研修を行ってきました。アカデミーは文部省より職業実践専門課程の認定を受けているため、この教員研修は必ず行わなければなりません。各教員がテーマを決めて研修先を決めます。
私のテーマというとズバリ「これから生き残れる鉢物生産経営」です。日本の花き生産は減少の一途で、毎年多くの生産者が廃業していきます。これから生き残っていく為に重要なことを知り、アカデミーの教育に生かすことが目的です。そこで、選んだのは愛知県岡崎市にある三浦園芸です。そこには令和の鉢物生産者の一つのモデルがありました。

三浦園芸の特徴はといえば、土を使わないハイドロカルチャーに特化した生産です。土の代わりに使うハイドロコーン(粘土を焼いて固めたもの)だけでなく、炭、おがくずなど様々な資材を使って生産する技術を有しています。最近では瓦の廃材を利用したカワラコーンを開発して環境にやさしい経営も実行しています。

三浦園芸のカワラコーン 色の来ナップが素敵です

三浦園芸のカワラコーン 色のラインナップが素敵です

 

三浦園芸は卸売市場に頼らないところも特長の一つです。卸売市場利用は毎年約5%前後、生産のほとんど子会社の三浦商事を使って販売しています。主な売り先はホームンセンターですが、ホームセンター上位25社のうち17社と取引実績があります。闇雲にホームンセンターに販売攻勢をかければいというものではありません。各ホームンセンターの経営状況や担当者の移動、役員人事などをしっかりリサーチしての結果です。この日は偶然にもイケアの担当者が商談に訪れていました。イケアとの商談は基本的に英語です。通訳が同行していますが、専門的な事になると直接担当者に自社の商品の説明をせねばなりません。

イケアとの商談

イケアとの商談

 

三浦園芸の社員、パートとも完全土日休日です。これはなかなかできることではありませんが、企業の理解と努力と社員の創意工夫で達成しています。イケアと取引を行うには、イケアの独自の基準であるIWAYをクリアせねばなりません。このIWAYはJGAPやISOといった農業認証の一つですが、JGAPやISOと比べてかなり厳しいものです。安全管理体制や廃棄物処分方法や労働者管理など様々ことについて、報告して合格せねばなりません。一例をあげるなら救急箱の中身までチェックが入ります。こうして、基準をクリアした書類は従業員を始めとする誰でも簡単に見るとこができる場所に保管せねばならないということです。IWAYをクリアできるなら、JGAPやISOは簡単に通ります。

基準の厳しいIWAY

基準の厳しいIWAY

 

三浦園芸は地元の生産者の団体に属さず独自路線を貫いている事も特徴の一つです。県や国の補助などを当てにしない経営です。そうなると、他の関りを拒絶した一匹オオカミのような印象を持つかもしれませんが、実際は全くそんなことはありません。2004年日本農業者大賞、2005年農林水産祭 天皇賞受賞からもわかる通り、地元の行政の世話役など多数引き受けており、地元の農業者育成に尽力されており、この日も観葉植物生産者を目指す若者が訪ねてきていました。

三浦園芸は消費者の生のニーズを得るために、カルチャーセンターでハイドロカルチャー講座を行っています。費用対効果では決して割の合うものではありませんが、ハイドロカルチャーの普及や地元貢献などを大切に考えています。

市民講座で商品PRと情報収集

市民講座で商品PRと情報収集

 

 

このように、三浦園芸の活動を紹介しましたが、日本における施設規模がミドルクラス以下の花き経営にとても重要な事がいくつかありました。大事なことは「高い意識と主体性をもって経営する」ことではないでしょうか。